アウトリーチプログラム
石川研究室では,研究室での言語研究・言語教育研究の成果を地域の学校に還元するアウトリーチプログラムを精力的に展開しています。これまで,各地の小学校・中学校・高等学校・教育委員会等において,児童・生徒の皆さんを対象とした特別講義や特別講演,また,現場の先生方を対象とした研修や講演を行っています。ご関心のある学校におかれては,お気軽にご連絡ください。
石川研究室では,研究室での言語研究・言語教育研究の成果を地域の学校に還元するアウトリーチプログラムを精力的に展開しています。これまで,各地の小学校・中学校・高等学校・教育委員会等において,児童・生徒の皆さんを対象とした特別講義や特別講演,また,現場の先生方を対象とした研修や講演を行っています。ご関心のある学校におかれては,お気軽にご連絡ください。
石川研究室では,神戸大学附属小学校における「せかい科/グローバル科」新設にともなうカリキュラム開発指導,幼稚園の保育過程と小学校低学年を接続した連携カリキュラム開発指導,西宮市教育委員会研究グループアドバイザーとしての市内小学校における英語共通カリキュラム・教授法開発などを手掛けてきました。
◎関係した学校
・西宮市教育委員会・・・市内小学校教員研修講師,研究グループ特別指導者,校長会講演会講師他
・兵庫県赤穂市教育委員会・・・市内小学校教員研修
・山口県美弥市教育委員会・・・小学校教員研修講師
・山口県教育委員会・・・小学校教育研究会講師
・西宮市立高木小学校,津門小学校,広田小学校,夙川小学校,山口小学校,春風小学校・・・企画研修講師
・兵庫県佐用町立利神小学校・・・カリキュラム開発,教員研修講師
・兵庫県赤穂市立城西小学校・・・カリキュラム開発,教員指導,教員実践指導他
・神戸大学附属小学校・・・研究指導
◎関連研究
・石川慎一郎他(2018)「グローバルキャリア人の育成をめざす新しい小学校英語教育の創造:神戸大学附属小学校「グローバル英語教育」の理念と実践」神戸大学国際コミュニケーションセンター論集14, 1-13.
・石川慎一郎(2007)「L1/L2コーパスの解析に基づく児童英語教育のための語彙マテリアル抽出システムの開発―小学校英語教育のための語彙選定の視点―」中部地区英語教育学会紀要,36,317-324
・石川慎一郎・冨田祐一・中嶋洋一(2010)『NHK:えいごルーキーGABBY』(児童用学参DVD)NHKエンタープライズ/コロンビアミュージックエンタテイメント・石川慎一郎(2005)「日本人児童用英語基本語彙表開発における頻度と認知度の問題:母語コーパスと対象語コーパスの頻度融合の手法」信学技報,105 (437),43-48
SGH(スーパーグローバルハイスクール)指定校を中心に,グローバル教育や探究活動のカリキュラムや評価法の開発も行っています。附属中等教育学校では,量的アンケートと質的アンケートを組み合わせ,テキストマイニングと多変量解析手法を融合して分析することで,教育的介入による生徒の内面的意識の変容を量化する手法を開発しました。このシステムは,同校の生徒のグローバル力評価に使用されました。
◎関係した学校
・兵庫県立国際高等学校・・・学校評議員
・私立西大和中学校・高等学校(SGH)・・・SGH運営指導委員
・兵庫県立伊丹高等学校(SGH)・・・SGH企画運営委員,学校評議員
・神戸大学附属中等教育学校(SGH)・・・SGH研究委員長
・兵庫県立長田高等学校(SGHアソシエイト)・・・探究課程における探究研究実践支援
・鳥取県立倉吉東高等学校・・・探究教育導入支援
・兵庫県立神戸甲北高等学校・・・探究教育導入支援
・兵庫県立兵庫高等学校・・・探究教育導入支援
・私立京都光華女子中学校高等学校・・・探究教育導入支援
・私立親和女子中学校高等学校・・・探究教育導入支援
・私立甲南女子中学校高等学校・・・探究教育導入支援
◎関連研究
・石川慎一郎・岩見理華(2017)「グローバル体験学習と探究学習が高校生の教科学力およびグローバル能力に与える影響」『信学技報』TL2017 -46, 13-18.
・石川慎一郎(2015)「学習者のグローバル意識の変化を観察する測定手法の開発と検証:コーパス言語学を応用した自由記述型回答データの分析」『グローバル教育』17, 2-16
・石川慎一郎(2014)「テキストマイニングによる学校教育目標としての『グローバル人材』 の再定義」塩澤正(編)『現代社会と英語―英語の多様性をみつめて―』(pp.15-27),金星堂
■小学校用
・小学生用英語学習番組「えいごルーキーGABBY」 (日本放送協会:NHK教育テレビ[Eテレ])
コーパス言語学の手法を応用し,日本人小学生が発信に必要な重要動詞を科学的手法によって選定し,番組のスキットを開発しました。番組の初回のキーワードはsayで,キーセンテンスはWhat did you say?です。大人の目で見れば,あるいは,英語を文法というシステムとして見れば,「いきなり疑問詞つきの疑問文で,しかも過去形というのは難しすぎる」と考えてしまいがちですが,《言葉のリアルを大事にする》,《子供の世界のリアルを大事にする》という基本的なポリシーに即して各回の内容を構成しました。NHKエデュケーショナル(コロンビアピクチャーズ)から,番組のDVDが販売されています。
■高校用
【現行課程用検定教科書】
・高校検定教科書『Revised Big Dipper』(数研出版)[著者代表]
高校中級用の英語教科書です。DAL(Deep Active Learning)やCLIL(Content and Language Integrated Learning)の視点を重視し,生徒の思考を多元的に深めることを重視して編纂されています。
【旧課程用検定教科書】
・高校検定教科書『Revised Polestar Reading Course』(数研出版)[共著]
高校上級用のリーディング教科書です。読みの方略の意識的獲得を重視しており,パラグラフリーディングなどのストラテジが自然に身に付くよう配慮されています。
・高校検定教科書『Comet English Course』(数研出版)[共著]
高校初級用の「英語コミュニケーション」の教科書です。英語が苦手な高校生が自信をもって英語の学習に取り組めるよう,自己効力感を高めるトピックを精選しました。
【参考書等】
・『WISH総合英語』(文英堂)[監修]
高校用の英文法参考書です。文法用語の使用を極力避け,イラストなどを多用して説明することをこころがけたほか,コーパス研究で明らかになった新たな語法情報なども,指導要領の制約を超えない範囲で,また初級の学習者に負担をかけない範囲で盛り込んでいます。たとえば,物を先行詞とする関係代名詞としては一般的にはwhichが知られていますが,本書では,最近の英語ではwhichよりもthatが標準法になっていることに触れています。
・『Corpus入試頻出4500英単語・熟語』(文英堂)[監修]
大学入試の英文コーパスを用いて収録語を決定したほか,例文に代わる例句(短いコロケーション)の採用,語源による語義説明,コンピュータ学習用ソフトウェアの添付など,語彙学習を促進する工夫を凝らしました。なお,本書は当初の『VITAL4500』から書名が変更されました。
■大学用
・『JACET8000英単語』(桐原書店)[共著]
大学英語教育学会(JACET)がコーパス分析に基づき決定した重要8000語をワードファミリーレベルで整理し,訳をつけて教材としました。JACET8000は多くの大学で使用されているほか,『ロングマン英和辞典』の語彙難度情報の指標にも使用されています。本書の専用問題集として,『JACET8000 Checkmate』も出版されています。
・『広げる知の世界:大学でのまなびのレッスン』(ひつじ書房)[共著]
大学生のためのスタディスキルの教科書です。日本語のアカデミックライティングの方法などについて解説を行いました。
■プレゼンテーション教育とロジカルシンキング
小中高大にまたがる日本の教育システムにおいて,ロジカルシンキング(論理的思考)のトレーニングが不足していることは広く指摘されています。一例をあげれば,小学校の作文指導において,「いきいきと書く」ことや「気持ちを大切にして書く」ことは教えられても,立論における整合性,効果的な論理構成・論理展開などの指導はほとんど行われていないのが実情です。
ロジカルシンキングの指導は,母語である日本語で行った場合,かえって本質が見えにくくなる事が少なくありません。日本語を使うと,表現の微細なニュアンスや含意に意識が向きがちで,根本的なロジックのねじれやゆがみが意識されにくくなるためです。この点をふまえ,当研究室では,英語プレゼンテーションとロジカルシンキングを組み合わせた教授法の開発を行っています。生徒・学生用の入門ガイドは,以下をご参照ください。
・神戸大学GPプロジェクト
平成17~20年度に,文部科学省「現代GP」資金を得て神戸大学で実施したプレゼンテーション教育プロジェクトの企画責任者・取組副責任者として,大学レベルにおける英語アカデミックプレゼンテーションの教授メソッドの開発を行いました。同プロジェクトは大きな成果をあげ,学外でも反響を得たところです(国際コミュニケーション協会取材記事他)。現在,神戸大学においては,プロジェクトの成果を継承して,プレゼンテーション教育を継続実施しています。
・兵庫県立国際高等学校GUEPプロジェクト
上記の研究成果を還元し,高校レベルでの適用の可能性を探るため,学校評議員を務めていた兵庫県立国際高等学校において,現場の先生方と一緒に,GUEPという新しい科目を立ち上げました。GUEPは,Global Understanding through English Presentationの略で,英語プレゼンの指導が目的となる類例の実践ではなく,英語プレゼンテーションを手段として,ロジカルシンキングや異文化理解を深化させることを目的としています。筆者自身も,年間数回,高校の教室に出向き,生徒の皆さんのプレゼンテーションに対して指導を行いました。また,GUEPの取り組みをベースとして,兵庫県下の高校生を対象としたコンテストも実施しました。この取り組みの中心となった真田弘和教諭の実践研究は,平成22年度英検助成(B実践部門:「グローバルな立場で自分の考え、意見、情報を相手に明確に伝えることができるように視覚資料や言語外要素を活用する戦略的な英語プレゼンテーション技術を身につける。」)を受けました。
・アウトリーチプロジェクト
併せてプレゼンテーション教育研究成果の外部へのアウトリーチを測るべく,依頼に応じ,大学・高等学校でプレゼンテーション法やプレゼンテーション教授法のワークショップやセミナーを開催しています。これまでに,岡山大学,兵庫県立伊丹高等学校(SGH校),兵庫県立長田高等学校(SGHアソシエート校),兵庫県立津名高等学校,兵庫県立宝塚高等学校,兵庫県立西宮北高等学校等で指導を行いました。
■はじめに
最近では,研究の世界でもビジネスの世界でも,海外で英語プレゼンテーションを行う機会が増えました。筆者は,この数年,文部科学省の「現代GP」資金を得て実施された神戸大の英語プレゼン指導プログラムの開発や,高校生向けのプレゼン指導メソッドの開発に関わってきましたが,指導の経験を通して感じたのは,英語以前の問題,つまり,「ロジックを組む」ということそのものを苦手とする学生・生徒が非常に多いということです。
ロジックというのは,日本の小中高の教育ではともすれば軽視されがちな要素ですが,ロジックは学術的な思考の要であり,プレゼンを通して「ロジックを練る」体験を積むことは批判的思考力や論理的判断力を涵養する上で重要であると考えています。
ここでは,はじめてプレゼンに挑戦する高校生,もしくは大学の学部の1~2年生を主な対象に,プレゼンの基本的なロジックフローの作り方,重要な表現などについてまとめておきます。
■プレゼンの目的
プレゼンには,大きく分けて,下記の3つの目的があります。
1)情報を伝える 2)興味を持たせる 3)説得する
このうち,日本人のプレゼンは1)に偏りがちですが,実のところ,1)であれば,わざわざプレゼンをするよりも,論文の抜き刷りや商品の案内文を聴衆に渡した方がよほど効果的です。むしろプレゼンでは,2)と3),つまり,相手の興味を引き,自分の主張を相手に納得させることが重要になります。
■プレゼンのタイプ
上記の3つの目的に応じて,下記の3つのタイプのプレゼンが考えられます。
1)情報伝達型プレゼン 2)娯楽型プレゼン 3)提案・説得型プレゼン
実際には,これらは独立しているものではなく,ビジネスプレゼンや学会プレゼンなどでは,3つの要素をうまくまぜて1つのプレゼンを作り上げていきますが,初心者が練習をする上では3)を基本に3分程度のプレゼンを作ってみるといいでしょう。
■提案・説得型プレゼンのロジック → ダウンロード版フローチャートはこちら。パワポテンプレートはこちら。
提案・説得型プレゼンでは,タイトルを決めた後、基本的なロジックを次のように組んでいくことが一般的です。
0) タイトル Title
1) 問題提起 Problem
2) 解決法提案 Solution
3) 効果提示 Expected Results
4) まとめと主張 Conclusion
はじめに問題を提示し,問題の負の面をわかりやすく強調します。問題点を強調することで改善の必要性を十分に聴衆が理解できたところで,解決法を具体的に提案します。その後,提案した手法を採用することで問題がどう解決されるかを示し,提案の重要性を再度強調してプレゼンは終了となります。
■ロジックの組み方(実践篇)
とはいえ,抽象的な話だけでは,ピンと来ないでしょう。ここでは,学校内での節水を訴えるプレゼンを作る場合を例に,ロジックの組み方を考えてみます。便宜上,ロジックの組み方が下手な物から比較的うまいものまでレベル別に典型例を紹介します。
(レベルEのプレゼン)
<問題> 水は大事だ <主張> 水は大切に使おう
★初心者によく見られるプレゼンですが,これでは,プレゼンターの主張したい提案の内容がはっきりしません。いったいどのように「水を大切に使う」のでしょうか? 提案プレゼンでは,クリアな問題提示と,それに呼応したクリアな提案の披露が必要です。
(レベルDのプレゼン)
<問題> 水は大事だ <主張> 水は大切に使おう <提案> 水の出しっぱなしをやめよう
★いちおう,最低限の提案らしきものが入りました。しかし,どうやれば,出しっぱなしが減るのでしょうか?そこを示すのがプレゼンです。
(レベルCのプレゼン)
<問題> 水は大事だ <主張> 水は大切に使おう <提案> 水の出しっぱなしをやめよう→クラスで節水を呼び掛けるポスターを作って水道の横に貼ろう
★提案はより具体化されました。プレゼンターの個性も少しは出てきたと言えるでしょう。しかし,油断しないでさらに厳しく考えてみます。ポスターで本当に水の出しっぱなしは減るでしょうか? 貼ってあるポスターを無視してしまう人が大部分なのでは?
(レベルBのプレゼン)
<問題> 水は大事だ
<主張> 水は大切に使おう→水の出しっぱなしをやめよう
<分析> とはいえ,呼びかけやポスターだけでは真の解決はない。個人の善意に任せるのではなくシステムとして解決する方法が必要
<提案> 校内の全ての水道にタイマーを設置しよう。タイマーの仕組みは…というものでこれで必ず水の出しっぱなしがなくなる。
★かなり本格的な提案プレゼンになってきました。たしかにこれだと,水の出しっぱなしは大幅に減るでしょう。空港や駅など,実際にこういうシステムを導入しているところもありますから,そうした写真を見せることで,自分の提案の効果を補強することもできます。しかし,ここで,意地悪な聴衆の目線に立って,考えてみましょう。世の中にいいことづくめのお話などそうはありません。このプレゼンは,何か大事なことを言い忘れていませんか。。。?
(レベルAプレゼン)
<問題> 水は大事だ
<主張> 水は大切に使おう→水の出しっぱなしをやめよう
<分析> とはいえ,呼びかけやポスターだけでは真の解決はない。個人の善意に任せるのではなくシステムとして解決する方法が必要
<提案> 校内の全ての水道にタイマーを設置しよう。タイマーの仕組みは…というものでこれで必ず水の出しっぱなしがなくなる。
<反論取込> タイマー設置には莫大な経費がかかるので無理と思うかもしれない,実際,私の調査では全校での設置には300万円が必要。
<反論反駁> しかし,試算では,タイマー設置によって年間50万円の水道代が節約可。6年間で経費は回収可能
<呼びかけ> わが校の節水のため,ぜひ私と一緒に,みんなで校長先生に提案に行こう!
★このぐらいになれば,いちおう,高校生や大学生の提案型プレゼンとしてなんとか通用するレベルと言えます。世の中,すべてのアイデアにはメリットもあればデメリットもあります。説得力のあるロジックメイキングのこつは,自分の思いついたアイデアや提案を独善的に絶対視せず,あえて批判者の目を自分の中に持つことです。たとえば,You may think... などの表現を用い,自分の提案に対して予想される反論をあらかじめ取り込んでしまうのも効果的です。そのうえで,具体的なデータをあげて予想される批判に反駁します。なにも質疑応答の時間まで待ってから批判を受ける必要はありません。予想される批判に対する反論をあらかじめ組み込んでおくことで,自身の提案も深まり,説得力も出てきます。
(レベルSプレゼンを目指して)
<導入> 日本の年間水使用量は*トン,雨量に比して日本は水が少ない。一方,生活用水の使用量は20年前の*倍に増加。このままでは水不足が深刻な問題になる。
<問題> 「水がなくなっても自分は無関係」では済まされない。たとえば(1)基板洗浄に水を使う先端工業に大打撃→失業者増加,(2)農業用水の不足は農業に影響→食品値上がり,(3)水の値段の上昇→生活圧迫,(4)学校給食停止→児童生徒の暮らしにも直接影響・・・つまり,水不足は,私たちにとっても他人ごとではない大きな問題だ。では,どうすればよいのか?
・・・
★上記のAのレベルがクリアできれば,今度は,そこにちょっとエモーショナルなスパイスをふりかけたいものです。Aで示したロジックはたしかに合理的なものですが,ロジックだけでは人は動きません。「俺には節水なんて関係ないし…」「別に水がなくなったって俺困らないし…」というようないまどきの(?)聴衆をどうやって自分のプレゼンの世界にに引き込むかも考える必要があります。そもそも,プレゼンターはそのテーマが重要だと感じており,だからこそ,その問題についてじっくり考えているわけですが,聴衆は必ずしもそうではありません。つまり,プレゼンターと聴衆が立っている基盤が違うのです。ゆえに,プレゼンのストーリーを組んでいく際には,プレゼンターと聴衆の意識・関心のずれを埋めるギャップフィラーを冒頭に用意しておくことが重要です。身近な体験談,具体的な数字,インパクトのある写真,聴衆への問いかけなどがギャップフィラーとして利用できます。たとえば,上記であれば,冒頭に,干ばつで地面が割れた写真や,取水制限で水をペットボトルにためている写真などを見せることで一気に問題の危機感が伝わるでしょう。数字や事実を使った理の面からのアプローチと,映像などを使った情の面からのアプローチをうまく組み合わせることで,問題の重要性を素早く聴衆に伝えることができます。冒頭部でそのようなスキーマを聴衆に形成した後で,問題を解決する提案の主張を始めていくのが成功するプレゼンのヒントと言えます。
政治家の演説や,内外のテレビショッピングなどは,こうしたテクニックをうまく利用しています。最初に隠れた問題点などをデフォルメしつつ,何度も何度も手を替え品を替えて執拗に伝え,見ている人がだんだん不安になってきたところで,一気に解決策となりうる政策や商品を提示するのです。今度,演説やコマーシャルを見聞きする時には,そうした視点から冷静に分析してみると,自分のプレゼンづくりの意外なヒントが得られるかもしれません。
■英語プレゼンに使える基本表現
・あいさつ
Good afternoon, everyone.
My name is X.
I am a student of X University.
Thank you for making the time to join us today.
・趣旨説明
The title of today's presentation is X.
The purpose of today's presentation is to introduce X and discuss its great potential merit to you all.
・プレゼン構成の説明
I've divided my presentation into four parts: first, problem, second, solution, third, exprected results, and finally conclusion.
I'd like to ask you to keep your questionstill the end of the presentation.
・第1部の開始と終了
OK, now let me begin with the first section, which I call a problem.
....
This is the end of the first section.
・次部への遷移
Now let us move on to the second section, which is a solution.
・結論・終結部
In this presentation I introduced/explained the importance [merits] of X.
In conclusion, X is ...
This brings me to the end of my presentation. Thank you for listening.
・質疑への遷移
We have a few minutes for questions.
Does anyone have a question or comment?
■論理的なプレゼン作成のためのチェックリスト
0. Title
・見ただけで内容がよくわかるか?
・短く簡潔か?
・平凡なものになっていないか?
・教科書的なタイトルでなく,「ちょっと聞いてみよう」という聴衆の関心をかきたてるものになっているか?
1 Introduction
・論じようとするテーマへ聴衆の注意を一気に引き付ける効果的な「ツカミ」になっているか?
・インパクトある画像,身近なエピソード,聴衆への問いかけなどをうまく利用できているか?
・論じようとする問題に充分合致した内容になっているか?
2. Problem
・以下のSolutionで解決できる問題になっているか?
・問題の重大性・深刻性は充分伝えられているか?
・聴衆が「他人ごと」ではなく自分自身の問題として感じられるよう工夫されているか?
・問題の危険性を強調するために画像やグラフなどを効果的に援用できているか?
3. Solution
・呈示した問題に対し,完璧に整合する解決策になっているか?
・他に多くの解決策がある中で,この解決策を提案する合理性は示されているか?
・大きな話に逃げず,実行可能な小さな切り口からの解決策の提案になっているか?
・本当に,その解決策で提示した問題は解消できるのか?
・プレゼンを聞かなくても想像できる平凡な解決策ではなく,「プレゼンター独自の視点」によるものになっているか?
・提案に印象的なネーミングをしたり,概念図を作ったりするなどして,オリジナリティを強調できているか?
4. Expected Results
・解決策を採用することで,問題がどのように解決され,それ以上にどのようなメリットが生じるのかをはっきり具体的に示しているか?
・主張を裏付ける数字などを利用できているか?
・解決策の導入にコストが必要となる場合は,解決策導入にかかるコストとそれによって得られるメリットを比較し,解決策の導入が合理的であることが実証されているか?
5. Conclusion
・《~という問題がある。~という私の提案する解決策を導入することで,~といった効果が期待できる。ゆえに、この解決策を導入すべきだ》ということを短く論理的にまとめられているか?
・名言の引用や,心に残るキーフレーズなどを用いて,相手の心に残る主張ができているか?
・主張の内容は,冒頭のintroduction,提示したproblems,提案したsolutionのすべてと論理的に完全に整合しているか?
・どこかに論理飛躍はないか?
■おわりに
プレゼンは,練習すれば誰でも確実に上達します。理論面のトレーニングも大事ですが,「習うより慣れろ」の部分も大きいのがプレゼンの特徴の1つでもあります。最初はうまく話せないかもしれませんが,経験を積めば,次第にコツがわかってきて,最後には,観客の反応をあれこれ思い浮かべながら,工夫してスクリプトやスライドを作ることが楽しくなってくるはずです。
プレゼンは高度に知的な作業であり,1つの問題を多角的に見る目を養います。また,自分の主張を批判的に見直し,改善の糸口を探るきっかけを与えてくれるものでもあります。ぜひ,こわがらず,積極的に英語プレゼンに挑戦してみてください。Good luck!
石川研究室は,記述言語学・応用言語学の理論的背景に基づき,L1やL2の慣習的言語運用パタンおよびその習得・学習プロセスを科学的手法によって解明することを目指しています。
石川研究室では,2016年度現在,博士後期課程2名,前期課程4名,合計6名が所属しています。コーパスに基づく科学的手法により,日本語・英語・中国語などの言語研究・習得研究を志している皆さんの受験をお待ちしています。